
川田絢音最新詩集 『雁の世』以後の詩と生に流れた緊密な時のささやき 川田詩学の猶予なき未来が白い光の地平に見える
川田絢音最新詩集 『雁の世』以後の詩と生に流れた緊密な時のささやき 川田詩学の猶予なき未来が白い光の地平に見える
波の音はいつまでも鳴り響いているだろう。空はいつまでも青を広げているだろう。やがて誰もいなくなった浜辺には光や風が届いてくるだろう。そして誰かが残した足跡からは思いが溢れてくるだろう。わたしやあなたの思いも溢れてくるだろう。光に照らされて、生きている人々の、死んでしまった人々の、すべての思いが溢れてくるだろう。そうして、すべてというすべての思いが風に乗って、これから生まれてくる人々に向かってゆくだろう。
屈折と断絶、そして邂逅と別離の限りなき反復
ふたつの若い身体に訪れる息詰まる試練を
世界は新たな希望と見なすのだろうか
現代詩の現在に誕生した若々しい恋歌、
福島直哉第一詩集刊行
遠すぎる距離が淋しいだけ
時の往来、日々の陰陽にひそむ解き得ないこころの揺れ。その揺れの小さな叫喚にそっと手を寄せる。鈴木正枝第二詩集刊行。
薄い闇が忍び寄るころ
初めて気づく
そこに月があったということに
ほんとうはずっとそこにあった
町も家々もずっとそこに
〔...〕
私は想っている
そうやって部屋がひとつ消えたことを
そうして
そのぶん町は暗くなるのだ
どんどん容赦なく暗くなっていくのだ
忘れない
気づかれなかったという現実が
何年も物言わず溜まっていくということを
Mよ
私は忘れない
──「陽が落ちて」抜粋
詩作者の書いた
(不可視)を越えて
(無数)から
ひとつを救い出さなければならない
遊戯でもなく懐疑でもない
詩史の揺らぎに対峙する真新しい言葉の生成
そこに問われているものは何か……
早いうちに飛び立っていった小鳥が降らせた
雪が中空に舞い、滞る
その雪の塊が落ちながらひらいていくのを見ていた
僕らは
道の途中で立ち尽くしていたんだ
夕暮れ時の天空から舞い降りた小さな精霊のよう
ニール・ヤング、プレスリー、ジェシ・ウィンチェスターの歌に
やわらかな夢幻の抒情が響きあうとき……
第27回歴程新鋭賞受賞
未刊詩篇を再編した稲川方人、初めての、そして最後の詩篇集。
1990年代以後の現代詩の「抒情」を、傷だらけの時代へと召喚し、多様な声の交叉するその場から眺望される未踏の詩学!
漫画家・ユズキカズの少年像が誘う。
没後7年、その死の直前に書き積もらせた圧倒的な詩群を新たに編集した一書。『血の穴』『血のたらちね』に続く、棄民たちの昭和への怨念がここにまた吐き出される! 戦後現代詩が書き得なかった極地にいまだ古賀忠昭は立っている。
著者プロフィール
古賀忠昭(こが・ただあき)
1944年、柳川のはずれの干拓地に生まれる。25 歳頃まで家業の農・漁業に従事。その後、廃品回収業を営む。2008 年、没。
詩集『泥家族』(71)、『念仏のうた』(72)、『土の天皇』(75)、『血ん穴』(06)、『血のたらちね』(07・丸山豊記念現代詩賞受賞)