刊行物カテゴリー: 詩集

【近刊】荒川みや子詩集『大きなテント』

定価:2400円+税
判型:A5判
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-62-6

ひかりの残像をかかえ
言葉を濾過するように

静かに息づく自然の官能への眼差し、その密やかな喜びから生まれた20篇
四半世紀にわたり書き継がれてきた詩作の営み、第4詩集
装幀=清岡秀哉

混乱し《性格をはずして
方位がずれて《いくつかは器からこぼれ
時差をなおして《左右にちらばり
静止する《ふり落ちるそのとき
子葉は殻にまもられ 眠りに集中する
葉ずれのかけひきはないだろう
同種のものどうし
重力のひずみを分かちあい
まったく それぞれが個として
ほんのすこし 闇のなかで動くことができる
(「夜の胡桃」より)

著者プロフィール
荒川みや子(あらかわ・みやこ)
富山県生まれ。東京都在住。
詩集に『森の領分』(1977年)、『冬物語1983』(1983年)、『つる性の植物あるいは空へ』(2001年)。
個人詩誌「Fiddle-Faddle」発行。

【新刊】橘 麻巳子詩集 知らない気配、幽かなあわい

著者:橘麻巳子
定価:2200円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:60
ISBN:978-4-908568-61-9

未知の気配に触れる言葉のふるえ。
吸い殻の消えない煙、薄紅の雲、埃を被った鋏、まだ彫られていない皮膚の刺青──。
世界のあわいをたどる22篇。第三詩集。
装幀=鈴木規子

ゆっくりと日輪滑り
その切れ端は水底にも溶け出している
にんげんたちは知らずに鎮まっている
吸い殻の、消えない煙高くなり
つぼみにも茎にもたかる幼虫の
噴水のよう。

両手で押しいただくように
しばらくの霧雨が、うれしい
上がったのを知ったのは
落ち葉に見えていた虫が
その翅をゆっくり開き
中の水色を見せたため。
最後の雨粒がその上を転げ
無言で熟れきった昼は
とっくに弾けて
手のひらはずぶ濡れになる

匂う 急な
大輪。
わたしは時間の破れるのを待っていた
一度は取れた翅を逆さに背負い
逃げもしない日差しの中で
向かっていく
(「みずいろ」)

著者プロフィール
橘 麻巳子(たちばな・まみこ)
1989年生。
詩集
『声霊』(七月堂)
『リベオートラ』(書肆子午線)

河口夏実詩集 ソングバード

著者:河口夏実
定価:2200円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:124
ISBN:978-4-908568-58-9

第一詩集『雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ』で第27回歴程新鋭賞を受賞した河口夏実、10年ぶりの待望の第二詩集。
くるしみよりも自由なこころを歌う珠玉の24篇。
装幀=稲川方人
おやすみ
おおきく握手をして別れよう
ここで立ちすくむ
筋力なら
すこし鍛えたほうがいいよ
羽根がひろがる歌をうたって天に近づく
角を曲がっていく
まぼろしの音楽が聞こえる
(「ラジオの日々」より)

著者プロフィール
河口夏実(かわぐち・なつみ)
詩集に『雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ』 (2016年 書肆子午線/第二十七回歴程新鋭賞)

冨岡悦子詩集 海辺の翼

著者:冨岡悦子
定価:2000円+税
判型:四六判・並製
ページ数:84
ISBN:978-4-908568-57-2

柔らかな理性に抱かれるまなざし
さまようこころにも言葉は寄り添い
喧噪なき道行きを慈しむ
前詩集『斐伊川相聞』で第58回日本詩人クラブ賞を受賞した冨岡悦子、新詩集。
装幀=稲川方人

秋の夜、わたしのフネに人を招いた。
黒葡萄と手書きの海図をたずさえて、
あなたはそっと足を踏み入れた。
ちいさなフネに、ようこそ、狭いけれど、ようこそ。
これから陸地を離れてふたり、夜をわたるのね。
今夜はいざよいの月。
東から浮かんで、しずしずのぼってゆく。
月はこうこうとあなたの海図を照らし、
ここがどこなのか人差し指を重ね、
アクロス・ザ・ユニバースをふたりで口ずさんで。
わたしたちの夜が
こわれないように
額の奥で
祈りながら。
(「いざようよ」より)

著者プロフィール
冨岡悦子(とみおか・えつこ)
1959年東京都生まれ。
著書
『植物詩の世界 日本のこころ ドイツのこころ』(2004年、神奈川新聞社)、『パウル・ツェランと石原吉郎』(2014年 、みすず書房、第15回日本詩人クラブ詩界賞受賞)
詩集
『椿葬』(2007年、七月堂)、『ベルリン詩篇』(2016年、思潮社)、『反暴力考』(2020年、響文社、第54回小熊秀雄賞、第23回小野十三郎賞受賞)、『斐伊川相聞』(2024年、書肆子午線、第58回日本詩人クラブ賞受賞)

大石ともみ詩集 unlearn アンラーン

著者:大石ともみ
定価:2400円+税
判型:A5変形・上製
ページ数:120

第66回中日詩賞受賞
かなしみというゆたかさがあると
わたしたちがいつか伝えうる日のために
いくつの問いかけどれほどのunlearn
学びなおし学びほぐす日々を重ねていくだろう
大石ともみ、第5詩集。
装幀=清岡秀哉

やわらかく微笑んで
澄んで透きとおって
生を終えた日
窓の外
青空に風花が舞って
日一日と澄んでいった母は
風花のなかにいた
(「風花(二)」より)

著者プロフィール
大石ともみ(おおいし・ともみ)
1956年愛知県生まれ。日本現代詩人会会員、中日詩人会会員。
個人詩誌「はるにれ」。豊田中日文化センター講師。
詩集 『水系』(「私の詩の会」、1983年)、『ルーシー 遠い虹のように』(樹海社、1994年)、『手ぬ花』(思潮社、2000年)、『めぐり水のとよのあかり』(思潮社、2015年)

沢田敏子詩集 祝祭の種

著者:沢田敏子
定価:2200円+税
判型:A5変形・上製
ページ数:108
ISBN:978-4-908568-53-4

第59回日本詩人クラブ賞受賞
大道芸人の家族は国境を越えられただろうか
祝祭の種は運ばれただろうか
この時代に、言葉を携えて生き延びるための、祈りにも似た20篇の詩。
沢田敏子、第9詩集。
装幀=清岡秀哉

地軸は もういなくなったひとたちの重さで
ぎ・し・り と いちにちを回転させる

いなくなった ひとよ
だから ずっと いてください
(「火夫と麵麭屋」より)

著者プロフィール
沢田敏子(さわだ・としこ)
愛知県生まれ。日本現代詩人会・日本詩人クラブ会員。
既刊詩集
『女人説話』(1971年)、『市井の包み』(1976年)第十回小熊秀雄賞、『未了』(1980年)第二十一回中日詩賞、『漲る日』(1990年)、『ねいろがひびく』(2009年)、『からだかなしむひと』(2016年)、『サ・ブ・ラ、此の岸で』(2018年)、『一通の配達不能郵便(デッド・レター)がわたしを呼んだ』(2020年)。

鈴木正枝詩集 秘かに青く、深く

著者:鈴木正枝
定価:2000円+税
判型:A5判・並製
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-54-1

ひとつのベンチで、部屋で、ひとつの時を、視野を、分かち合う。やがて、それが断たれる日、独りの眼差しに誘われるもの。
前詩集『そこに月があったということに』で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞した鈴木正枝、第三詩集。
装幀=稲川方人。

あなたの大きく見開いた眼が
わたしの視線を切り落とし
何かが壊れてはらはらとこぼれ落ちる
それはふたりの肩に
少しゆるんだ言い訳のように降り積もり
耐えきれない沈黙の端がほころびて
床がゆっくりと濡れていく
(「共有される沈黙」より)

著者プロフィール
鈴木正枝(すずき・まさえ)
茨城県出身。横浜市在住。
『そこに月があったということに』(2016年、書肆 子午線)で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞。
その他の詩集に『キャベツのくに』(2010年 ふらんす堂)。
詩誌「タンブルウィード」「天国飲屋」「るなりあ」同人。

坂多瑩子詩集 おはようジャック&ベティ

著者:坂多瑩子
定価:2000円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:96
ISBN:978-4-908568-52-7

あなたは/ジャック・ジョーンズですか
わたしはベティ・スミス/革靴をはいてます

ずっと昔の昨日へ弾んでゆけ、詩よ。世界は擦れちがう破片の愛ばかり。
坂多瑩子新詩集。
装幀=稲川方人。

シーちゃんは家船っ子
川に落っこちた話ばかりするので
何してたのどうしたの
わざと聞いて
それでそれでと笑いころげる
ええ者がええ者のまま生きていくのって
息苦しくてしかたがないよ
わるもんいっぱいの映画はなんて痛快なのだろう
なんちゃらかんちゃら風船みたいにかるくて
大きく深呼吸してごめんなんていわなくていい
ズックのかたわれが流れていく
だからなんなの
ハウスボートやねん
影のように座っているシーちゃんがおいでよとあたしを呼んだ
ひまとよ川の祭り
うすく花火があがっている
(「ひまとよ川」より)

著者プロフィール
坂多瑩子(さかた・えいこ)
広島県生まれ。第一詩集『どんなねむりを』(2003年)で第36回横浜詩人会賞受賞。他の詩集に『塩壺とスプーン』(2006年)、『お母さんご飯が』(2009年)、『ミルクパーパの裏庭』(2011年、電子ブック)、『ジャム 煮えよ』(2013年)、『こんなもん』(2016年)、『さんぽさんぽ』(2019年)、『物語はおしゃべりより早く、汽車に乗って』(2023年)。

増田秀哉詩集 遺棄されたものたちのドローイング

著者:増田秀哉
定価:2400円+税
判型:A5変形
ページ数:116
ISBN:978-4-908568-50-3

社会によって遺棄された汚点、擦れた絵の具、折れた鉛筆の芯、チャコールの屑。線にもなりきれず、ただ不快として投げられた痕跡。その粗野のなかに潜む慎重な粗暴さ、あるいは、投げやりな囁き声をどうか聴き取ってほしい。
強烈な印象をもたらした第一詩集『零時のラッパをぶっ放せ』から8年、第二詩集ついに刊行!
装幀=清岡秀哉

春はリハーサルで終わった、夏はバーモントが攻めてくるだろう、痣だらけの部屋がソフトフォーカスに燃える、寝癖がますますひどくて、さよなら、時候の挨拶よ、「深夜のカフェインから始まるぼくらの蜂起」のために、茎燃ゆ、茎燃ゆ、ってはしゃぐなよ、隙間という隙間に錯乱を産み付けて、これはチャンスなんだろ、目脂が青く発光するのはチャンスなんだろ(「ビジョンメガネ」より)

著者プロフィール
増田秀哉(ますだ・しゅうや)
1987年大阪府生まれ。
詩集に『零時のラッパをぶっ放せ』(七月堂、2017年)。

福島直哉詩集 星の身体

著者:福島直哉
定価:2400円+税
判型:A5変形・上製(コデックス装 ドイツ装)
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-51-0

かさなりあうことのないわたしとあなたの瞳に映る記憶の故郷、彼方の岸辺。
涙を失くし、季節を失くし身体を失くしても、生まれくる無名のまたたきが次々にこぼれ落ちる。
待望の福島直哉第二詩集ついに刊行。深き抒情の森へ!
装幀=稲川方人

からだをなくして
それでも生きているさびしさをいのちと呼んで
わたしはもう二度と
誰かに会うことはなくなって
そのことに少しほっとしながら
溜息をこぼすようにそっと空を見上げて
ひかりとかげが一つの音のように
雲の中を流れてゆくあいだ
わたしはこえやことばを使うことに
激しくかなしみながら
そこで流れてゆく多くの景色を
故郷のように眺めている
(「椿の葉は鉛色の光を含み」より)

著者プロフィール
福島直哉(ふくしま・なおや)
1989年、神奈川県横浜市生まれ。
第一詩集『わたしとあなたで世界をやめてしまったこと』(2016年)。