アーカイブ: 刊行物
福島直哉詩集 わたしとあなたで世界をやめてしまったこと
波の音はいつまでも鳴り響いているだろう。空はいつまでも青を広げているだろう。やがて誰もいなくなった浜辺には光や風が届いてくるだろう。そして誰かが残した足跡からは思いが溢れてくるだろう。わたしやあなたの思いも溢れてくるだろう。光に照らされて、生きている人々の、死んでしまった人々の、すべての思いが溢れてくるだろう。そうして、すべてというすべての思いが風に乗って、これから生まれてくる人々に向かってゆくだろう。
屈折と断絶、そして邂逅と別離の限りなき反復
ふたつの若い身体に訪れる息詰まる試練を
世界は新たな希望と見なすのだろうか
現代詩の現在に誕生した若々しい恋歌、
福島直哉第一詩集刊行
絓 秀実時評集 タイム・スリップの断崖で
リベラル・デモクラシーの断崖から世界を照射する
2004年の小泉政権下でのイラク邦人人質事件から2015年の安保関連法案をめぐる国会前デモまで、そこに顕在化した「リベラル・デモクラシー」のリミット=断崖を示す、現在、最もアクチュアルな批評家・絓秀実の最新時評集!
2016年現在の「戦後憲法」と「民主主義」をめぐる書き下ろし論考(「戦後憲法は「正統」に成立したのか、民主主義が必須に内包する「革命」をめぐって」)を収録。
文中で言及された出来事や固有名詞等についての、10万字以上に及ぶ脚注を付す。
鈴木正枝詩集 そこに月があったということに
遠すぎる距離が淋しいだけ
時の往来、日々の陰陽にひそむ解き得ないこころの揺れ。その揺れの小さな叫喚にそっと手を寄せる。鈴木正枝第二詩集刊行。
薄い闇が忍び寄るころ
初めて気づく
そこに月があったということに
ほんとうはずっとそこにあった
町も家々もずっとそこに
〔...〕
私は想っている
そうやって部屋がひとつ消えたことを
そうして
そのぶん町は暗くなるのだ
どんどん容赦なく暗くなっていくのだ
忘れない
気づかれなかったという現実が
何年も物言わず溜まっていくということを
Mよ
私は忘れない
──「陽が落ちて」抜粋
近藤洋太評論集 詩の戦後─宗左近/辻井喬/粟津則雄
戦後、詩は何を経験してきたのか。
1955年『死の灰詩集』論争で切り開かれた詩の戦後。2011年東日本大震災後の現在まで、詩は何を経験してきたのか。宗左近、辻井喬、粟津則雄、寺門仁、古木春哉、秋山清、吉本隆明、眞鍋呉夫の名と共に語られる詩の戦後の記憶。
装幀=佐々木陽介
米山浩平詩集 四千の通行人
詩作者の書いた
(不可視)を越えて
(無数)から
ひとつを救い出さなければならない
遊戯でもなく懐疑でもない
詩史の揺らぎに対峙する真新しい言葉の生成
そこに問われているものは何か……
河口夏実詩集 雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ
早いうちに飛び立っていった小鳥が降らせた
雪が中空に舞い、滞る
その雪の塊が落ちながらひらいていくのを見ていた
僕らは
道の途中で立ち尽くしていたんだ
夕暮れ時の天空から舞い降りた小さな精霊のよう
ニール・ヤング、プレスリー、ジェシ・ウィンチェスターの歌に
やわらかな夢幻の抒情が響きあうとき……
第27回歴程新鋭賞受賞
子午線 原理・形態・批評 Vol.4
モノローグ ─戦後小学生日記─
沖島 勲 未映画化シナリオ集成
映画を志す若い感性がいま「世界」を発見するために!
異界の風を運び来た映画作家・沖島勲、その未映画化シナリオ五篇をここに集成
稲川方人詩集 形式は反動の階級に属している
未刊詩篇を再編した稲川方人、初めての、そして最後の詩篇集。
1990年代以後の現代詩の「抒情」を、傷だらけの時代へと召喚し、多様な声の交叉するその場から眺望される未踏の詩学!
漫画家・ユズキカズの少年像が誘う。