アーカイブ: 刊行物

【近刊】中尾太一詩集『君韻幻灯機』

著者:中尾太一
定価:2800円+税
判型:A5変形・上製筒函
ページ数:116
ISBN:978-4-908568-60-2

人と時代に寄り添いながら明日をさまよう悲しみの行方について語ろう
詩の可能性に、私たちはいま何を問うのだろうか

映画『ルート29』の原作として話題となった『ルート29、解放』、第40回詩歌文学館賞を受賞した『フロム・ティンバーランド』を超えて新たな詩の地平をひらく最新詩集。
表紙絵=榊原澄人/造本・装幀=稲川方人

わたしは長いあいだきみを探しています
部屋に迷い込んだ日差しが息をひそめてあたりを見回しています
わたしの時間も光を受けたまま、静物のように止まっています
その光源を予感するわたしの魂は若いままですが、それによってわたしは苦しみました

いつか「君韻」という言葉の意味が載った詩集を見つけたとき
わたしはうれしかった
そこには琥珀の写真も添えてありました
琥珀のなかには「繋ごうとした手」の「動き」が入っていました
まだ生きていたんだね、とわたしの頬を涙が伝いました
そこで恋という文字を拾ったときもうれしかった
それはわたしの寂しい庭、何もない庭を彩るたったひとつの言葉でした
(「君韻幻灯機」より)

著者プロフィール
中尾太一(なかお・たいち)
1978年、鳥取県生まれ。2006年、思潮社50周年記念現代詩新人賞。詩集に『数式に物語を代入しながら何も言わなくなったFに、掲げる詩集』、『御世の戦示の木の下で』、『現代詩文庫 中尾太一詩集』、『ア・ノート・オブ・フェイス』、『ナウシカアの花の色と、〇七年ゼロナナの風の束』(第10回鮎川信夫賞)、『詩篇 パパパ・ロビンソン』、『ルート29、解放』(映画『ルート29』原作)、『フロム・ティンバーランド』(第40回詩歌文学館賞)。

【新刊】荒川みや子詩集『大きなテント』

定価:2400円+税
判型:A5判
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-62-6

ひかりの残像をかかえ
言葉を濾過するように

静かに息づく自然の官能への眼差し、その密やかな喜びから生まれた20篇
四半世紀にわたり書き継がれてきた詩作の営み、第4詩集
装幀=清岡秀哉

混乱し《性格をはずして
方位がずれて《いくつかは器からこぼれ
時差をなおして《左右にちらばり
静止する《ふり落ちるそのとき
子葉は殻にまもられ 眠りに集中する
葉ずれのかけひきはないだろう
同種のものどうし
重力のひずみを分かちあい
まったく それぞれが個として
ほんのすこし 闇のなかで動くことができる
(「夜の胡桃」より)

著者プロフィール
荒川みや子(あらかわ・みやこ)
富山県生まれ。東京都在住。
詩集に『森の領分』(1977年)、『冬物語1983』(1983年)、『つる性の植物あるいは空へ』(2001年)。
個人詩誌「Fiddle-Faddle」発行。

【新刊】中原中也──傍らの詩人

著者:陶原葵
定価:2200円+税
判型:四六判・並製
ページ数:192
ISBN:978-4-908568-59-6

朽ちることなく語り継がれる中原中也の像に
いままた新たな声を寄せる。

中也の言葉の魅力を伝える批評、旧論への補遺となる論考、ゆかりの地を訪れた時の思いを綴るエッセイ、中也を描いた映画の評論を収めた第二評論集。

私の中原中也愛読歴も半世紀を超えた。二〇一三(平成二十五)年の、四十年かかった『中原中也のながれに 小石ばかりの、河原があって、』 (思潮社) 刊行から早くも十年以上が経ってしまったが、いつも傍らにあり、生の節々に奥処より湧き上がる中原の言葉は、変わることなく私の中に横たわり支えとなっている。
(「エピローグ」より)

著者プロフィール
陶原 葵(とうはら・あおい)
大阪に生まれ、東京で育つ。
日本女子大学、同大学院修了。
詩集
『リターン』(ふらんす堂、1999年)
『明石、時、』(思潮社、2010年)
『帰、去来』(思潮社、2017年)
評論集
『中原中也のながれに 小石ばかりの、河原があって、』(思潮社、2013年)

【新刊】橘 麻巳子詩集 知らない気配、幽かなあわい

著者:橘麻巳子
定価:2200円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:60
ISBN:978-4-908568-61-9

未知の気配に触れる言葉のふるえ。
吸い殻の消えない煙、薄紅の雲、埃を被った鋏、まだ彫られていない皮膚の刺青──。
世界のあわいをたどる22篇。第三詩集。
装幀=鈴木規子

ゆっくりと日輪滑り
その切れ端は水底にも溶け出している
にんげんたちは知らずに鎮まっている
吸い殻の、消えない煙高くなり
つぼみにも茎にもたかる幼虫の
噴水のよう。

両手で押しいただくように
しばらくの霧雨が、うれしい
上がったのを知ったのは
落ち葉に見えていた虫が
その翅をゆっくり開き
中の水色を見せたため。
最後の雨粒がその上を転げ
無言で熟れきった昼は
とっくに弾けて
手のひらはずぶ濡れになる

匂う 急な
大輪。
わたしは時間の破れるのを待っていた
一度は取れた翅を逆さに背負い
逃げもしない日差しの中で
向かっていく
(「みずいろ」)

著者プロフィール
橘 麻巳子(たちばな・まみこ)
1989年生。
詩集
『声霊』(七月堂)
『リベオートラ』(書肆子午線)

河口夏実詩集 ソングバード

著者:河口夏実
定価:2200円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:124
ISBN:978-4-908568-58-9

第一詩集『雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ』で第27回歴程新鋭賞を受賞した河口夏実、10年ぶりの待望の第二詩集。
くるしみよりも自由なこころを歌う珠玉の24篇。
装幀=稲川方人
おやすみ
おおきく握手をして別れよう
ここで立ちすくむ
筋力なら
すこし鍛えたほうがいいよ
羽根がひろがる歌をうたって天に近づく
角を曲がっていく
まぼろしの音楽が聞こえる
(「ラジオの日々」より)

著者プロフィール
河口夏実(かわぐち・なつみ)
詩集に『雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ』 (2016年 書肆子午線/第二十七回歴程新鋭賞)

冨岡悦子詩集 海辺の翼

著者:冨岡悦子
定価:2000円+税
判型:四六判・並製
ページ数:84
ISBN:978-4-908568-57-2

柔らかな理性に抱かれるまなざし
さまようこころにも言葉は寄り添い
喧噪なき道行きを慈しむ
前詩集『斐伊川相聞』で第58回日本詩人クラブ賞を受賞した冨岡悦子、新詩集。
装幀=稲川方人

秋の夜、わたしのフネに人を招いた。
黒葡萄と手書きの海図をたずさえて、
あなたはそっと足を踏み入れた。
ちいさなフネに、ようこそ、狭いけれど、ようこそ。
これから陸地を離れてふたり、夜をわたるのね。
今夜はいざよいの月。
東から浮かんで、しずしずのぼってゆく。
月はこうこうとあなたの海図を照らし、
ここがどこなのか人差し指を重ね、
アクロス・ザ・ユニバースをふたりで口ずさんで。
わたしたちの夜が
こわれないように
額の奥で
祈りながら。
(「いざようよ」より)

著者プロフィール
冨岡悦子(とみおか・えつこ)
1959年東京都生まれ。
著書
『植物詩の世界 日本のこころ ドイツのこころ』(2004年、神奈川新聞社)、『パウル・ツェランと石原吉郎』(2014年 、みすず書房、第15回日本詩人クラブ詩界賞受賞)
詩集
『椿葬』(2007年、七月堂)、『ベルリン詩篇』(2016年、思潮社)、『反暴力考』(2020年、響文社、第54回小熊秀雄賞、第23回小野十三郎賞受賞)、『斐伊川相聞』(2024年、書肆子午線、第58回日本詩人クラブ賞受賞)

大石ともみ詩集 unlearn アンラーン

著者:大石ともみ
定価:2400円+税
判型:A5変形・上製
ページ数:120

第66回中日詩賞受賞
かなしみというゆたかさがあると
わたしたちがいつか伝えうる日のために
いくつの問いかけどれほどのunlearn
学びなおし学びほぐす日々を重ねていくだろう
大石ともみ、第5詩集。
装幀=清岡秀哉

やわらかく微笑んで
澄んで透きとおって
生を終えた日
窓の外
青空に風花が舞って
日一日と澄んでいった母は
風花のなかにいた
(「風花(二)」より)

著者プロフィール
大石ともみ(おおいし・ともみ)
1956年愛知県生まれ。日本現代詩人会会員、中日詩人会会員。
個人詩誌「はるにれ」。豊田中日文化センター講師。
詩集 『水系』(「私の詩の会」、1983年)、『ルーシー 遠い虹のように』(樹海社、1994年)、『手ぬ花』(思潮社、2000年)、『めぐり水のとよのあかり』(思潮社、2015年)

沢田敏子詩集 祝祭の種

著者:沢田敏子
定価:2200円+税
判型:A5変形・上製
ページ数:108
ISBN:978-4-908568-53-4

第59回日本詩人クラブ賞受賞
大道芸人の家族は国境を越えられただろうか
祝祭の種は運ばれただろうか
この時代に、言葉を携えて生き延びるための、祈りにも似た20篇の詩。
沢田敏子、第9詩集。
装幀=清岡秀哉

地軸は もういなくなったひとたちの重さで
ぎ・し・り と いちにちを回転させる

いなくなった ひとよ
だから ずっと いてください
(「火夫と麵麭屋」より)

著者プロフィール
沢田敏子(さわだ・としこ)
愛知県生まれ。日本現代詩人会・日本詩人クラブ会員。
既刊詩集
『女人説話』(1971年)、『市井の包み』(1976年)第十回小熊秀雄賞、『未了』(1980年)第二十一回中日詩賞、『漲る日』(1990年)、『ねいろがひびく』(2009年)、『からだかなしむひと』(2016年)、『サ・ブ・ラ、此の岸で』(2018年)、『一通の配達不能郵便(デッド・レター)がわたしを呼んだ』(2020年)。

鈴木正枝詩集 秘かに青く、深く

著者:鈴木正枝
定価:2000円+税
判型:A5判・並製
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-54-1

ひとつのベンチで、部屋で、ひとつの時を、視野を、分かち合う。やがて、それが断たれる日、独りの眼差しに誘われるもの。
前詩集『そこに月があったということに』で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞した鈴木正枝、第三詩集。
装幀=稲川方人。

あなたの大きく見開いた眼が
わたしの視線を切り落とし
何かが壊れてはらはらとこぼれ落ちる
それはふたりの肩に
少しゆるんだ言い訳のように降り積もり
耐えきれない沈黙の端がほころびて
床がゆっくりと濡れていく
(「共有される沈黙」より)

著者プロフィール
鈴木正枝(すずき・まさえ)
茨城県出身。横浜市在住。
『そこに月があったということに』(2016年、書肆 子午線)で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞。
その他の詩集に『キャベツのくに』(2010年 ふらんす堂)。
詩誌「タンブルウィード」「天国飲屋」「るなりあ」同人。