アーカイブ: 刊行物

坂多瑩子詩集 物語はおしゃべりより早く、汽車に乗って

著者:坂多瑩子
定価:2200円+税
判型:A5変形・並製筒函
ページ数:132
ISBN:978-4-908568-34-3

抒情からも、抒事からも自由に言葉がはばたいていくとき、詩は、 遥かに再来する物語のひとつひとつを、ふかく抱きしめている。 詩人の新たな出発を示す42篇を収めた第七詩集。
栞=杉本 徹/柴田千晶
造本・装幀=稲川方人/装画=高橋千尋

ちっちゃな青空
という言葉がやけに好きだった 松尾和子の歌う「再会」
あたしの見ていた空はいつだって大きかった
よそよそしくていじわるで きどりや
だから あっかんべ
ちっちゃな青空って
かわいい かわいいかわいいといっていると
ひとりにしないでとちっちゃな青空がいうので
抱きかかえてあたしだけのおうちに帰った
(「夏のおわりに父」より)

自分にとって原型となり得る詩、という言葉が常に頭の隅にあった。今ようやく自分の書いてきたおぼつかない詩がジグソーパズルのように一つの風景を見せ始めてくれている。(「あとがき」より)

著者プロフィール
坂多瑩子(さかた・えいこ)
広島県生まれ。第一詩集『どんなねむりを』(2003年)で第36回横浜詩人会賞受賞。他の詩集に『塩壺とスプーン』(2006年)、『お母さんご飯が』(2009年)、『ミルクパーパの裏庭』(2011年、電子ブック)、『ジャム 煮えよ』(2013年)、『こんなもん』(2016年)、『さんぽさんぽ』(2019年)。

蜆シモーヌ詩集 膜にそって膜を

著者:蜆シモーヌ
定価:2400円+税
判型:B5判変形
ページ数:80
ISBN:978-4-908568-33-6

そこにある、やってくる、拡散する言葉/声のうねりにのみ込まれる。 蜆シモーヌ、待望の第二詩集刊行。 装幀=鈴木規子。
「ぴりか/ぴりか/ここは楽園です。」(「ぴりか」)
「ひとはみずからを/模倣して/なにももたずに、そこをでていく」(「春のために」)
著者プロフィール 蜆シモーヌ(しじみ・しもーぬ) 1979年生まれ。第59回現代詩手帖賞受賞。 詩集『なんかでてるとてもでてる』(思潮社、2021年)。

映画夢情(えいがゆめなさけ)

著者:佐藤千穂
定価:4800円+税
判型:四六判・上製
ページ数:676
ISBN:978-4-908568-32-9

1960年代初めより映画への溢れる愛憎を自在闊達な思考と文体で書き継いできた佐藤千穂。
その知られざる全容を集成。
解題=梶間俊一(映画監督)/荒井晴彦(脚本家/映画監督/「映画芸術」代表)
ボクにとっては近年最も刺激的な映画論集であった。 梶間俊一

小川徹の「裏目読み批評」なんて、いまや誰も知らないだろう。女小川徹みたいな千穂節の映画評論を世に知らしめたいとずっと思っていた。 荒井晴彦

中尾太一 詩集 ルート29、解放

著者:中尾太一
定価:2800円+税
判型:A5判変形・並製チリあり
ページ数:144
ISBN:978-4-908568-31-2

薄く、張り裂けそうな詩の皮膚に
精いっぱいの光を浴びて予感する明日のポエトリー
中尾太一新詩集!
装幀=稲川方人/カバー写真撮影=菊井崇史

声を押し殺し
こころを固く閉ざし
わたしも、あなたも
生まれたというたったひとつの史実に現れようと
中指を突き立てる
(「飛行機雲」より)

「そうではない」と発語するためにわたしは生まれた。そして今、「あなたも同じだ」と書いたビラを、わたしにとってきわめて戦後史的(父母的)な「淵」であり、今日という一日の前で意気地なく途方に暮れている、自分とそっくりな「国道29号線」の空に撒こうと思う。そうした意思が詩という見えない「わたしたちの分身」の位置をときに的確に(だけどやっぱりせっかちに)探り当て、それらの「言葉になる才能」を触発し、開いていったとき、この詩集によってようやく可能になった行の表現があると感じている。(「『たとえば』の話と後記」より)

著者プロフィール
中尾太一(なかお・たいち)
1978年鳥取県生まれ。2006年、思潮社50周年記念現代詩新人賞受賞。2007年、第一詩集『数式に物語を代入しながら何も言わなくなったFに、掲げる詩集』を刊行。2019年、詩集『ナウシカアの花の色と、〇七年の風の束』(2018年)で第10回鮎川信夫賞受賞。その他の詩集に『御代の戦示の木の下で』(2009年)、『現代詩文庫 中尾太一詩集』(2013年)、『a note of faith ア・ノート・オブ・フェイス』(2014年)、『詩篇 パパパ・ロビンソン』(2020年)。

一目散 豊島重之評論集

著者:豊島重之
定価:3500円+税
判型:四六判・スリーブ函入り
ページ数:428
ISBN:978-4-908568-30-5

「モレキュラーシアター」主宰・豊島重之の批評的テキストを初集成。
青森県八戸市を拠点に、2019年に亡くなるまで、ジャンルを越えた芸術 表現、批評の場を結集・展開し続けたその思考がいま明らかになる。
自らが提唱した「絶対演劇」に関する宣言文をはじめ、写真や映像表現、吉増剛造、カフカ、アルトー、ベケット、寺山修司についての批評的テキストを収録。
跋=倉石信乃 装幀=山口信博+玉井一平

著者プロフィール
豊島重之(としま・しげゆき)
1946年青森県八戸市生まれ。演出家。キュレーター。精神科医。モレキュラーシアター芸術監督。編著・共著に『68ー72・世界革命・展 ICANOF 2008』、『飢餓の木 2010』『種差四十四連図』など多数。

岸田将幸 詩集 風の領分

著者:岸田将幸
定価:2800円+税
判型:A5判変形
ページ数:112
ISBN:978-4-908568-29-9

第29回萩原朔太郎賞受賞

ごらん、これがほんとうの正午の火照り。きみに影をつくる、生きて在ることの静かな明るさ

現代詩の主体と詩語のありかを問い続けてきた詩人・岸田将幸。
前詩集『亀裂のオントロギー』から7年、静かなる耐久の時間を経て、限りある存在の地平から詩にゆるやかな解放をもたらす待望の第六詩集。
装幀=著者自装

本書は単純な章立てで構成した。この四つの場所を行ったり来たりしているのが近年の詩の正直な姿で、それ以上ではない。あとは、おぼつかない生活があるだけである。
それでも、僕は依然として誰かを、何かを説得しようとしている。
(「後書」)

著者プロフィール
岸田将幸(きしだ・まさゆき)
1979年愛媛県生まれ。詩人。現在、農家。
2010年、詩集『〈孤絶-角〉』(思潮社、2009年)で第40回高見順賞受賞。2015年、詩集『亀裂のオントロギー』(思潮社、2014年)で第6回鮎川信夫賞受賞。
その他の詩集に『生まれないために』(七月堂、2004年)、『死期盲』(思潮社、2006年)、『丘の陰に取り残された馬の群れ』(ふらんす堂、2007年)、『現代詩文庫202 岸田将幸詩集』(思潮社、2013年)。
評論集に『詩の地面 詩の空』(五柳書院、2019年)。

村松仁淀 詩集 ホール・ニュー・ワールド

著者:村松仁淀
定価:2400円+税
判型:四六判
ページ数:128
ISBN:978-4-908568-28-2

多彩なスタイルを駆使して描き出す新しい世界の息づき。
共同詩集『過剰』で注目された村松仁淀、登場!

栞=藤本哲明/稲川方人

彼の罅割れた詩の器は、矩形の軽トラとなって海を渡っていく。
藤本哲明

潰れかかった想いがひとつ、酒に火照った身がひとつ、雨のなか傘もささずに、四天王寺まで、と嬉しくもまるで歌謡曲のように書き出される傑作「リズム・ネーション」が描く、天空の幾多の星ほども遥か彼方に息づいている「まぶしい光の大きな町」で、僕は(僕らは)たったひとりになったとしても、愛しく懐かしい世界のことを忘れずに思い、やがて到来するだろう、心に沁みてくるものを待とう!
稲川方人

軽トラの車内に
あとからあとから演歌があふれ
軍歌があふれて
おれの両目に涙があふれる
おれの魂はリディムにあふれて
手動で窓を開けてみた
なだらかにどこまでも遠く続く
山の彼方へレゲエを届けるため
雑草の一片の青春を終わり
そして牧野博士
おれはみずからに学名を与えて
山のうえにあるあなたのための
植物園へ繁っていたい
それがたったひとつだけの
おれにできる報恩であるならば
あのザイオンよりもはるか
須弥にまで鬱蒼としてみせよう
(「阿吽」より)

古屋 朋 詩集 ひとつゆび

著者:古屋 朋
定価:2200円+税
判型:A5判
ページ数:84
ISBN:978-4-908568-27-5

見開かれた瞳に映じる世界の明滅。
新鋭による第一詩集。
装幀=鈴木規子/カバー・口絵写真=manimanium

このとまらないゆれは
うまれるずっとまえからはじまっていると
どこかに書いてあったようにおもう
大きなゆれにたおれないよう
われないよう
あんしんかんを やすらぎを
かろうじて
ひとつのゆびで
おさえてゆくのだろう
(「ひとつゆび」より)

著者プロフィール
古屋 朋(ふるや・とも)
一九九一年北京市生まれ、東京都育ち。早稲田大学大学院文学研究科修了。
『ユリイカ』今月の作品掲載(「ひとつゆび」「とける海」)。
文芸同人『プラトンとプランクトン』参加。

眞鍋先生──詩人の生涯

著者:近藤洋太
定価:2200円+税
判型:四六判並製
ページ数:256
ISBN:978-4-908568-26-8

眞鍋呉夫生誕100年記念出版。

戦時下、同人誌「こをろ」に集った若き文学者たちとの青春、「現在の会」への参加と共産党への入党、日本浪曼派の流れを汲む文芸誌「ポリタイア」への参加、戦争、戦後を通し「孤立においての連帯」を求めた俳人・作家、眞鍋呉夫。
43年にわたってその謦咳に接した著者が描く詩人の生涯。

眞鍋呉夫は最晩年にいたるまで、無結社を貫いた。宗匠となることを拒んで、座の人間はみな平等で対等な関係であることをめざした。俳句が「師系」の文学であることを認めなかった。しかし芭蕉と曾良、魯迅と柔石、萩原朔太郎と伊東静雄といった人たちの間にはあった、他からのいかなる権威や道徳や習慣によって成立した関係とも無縁な「因習外の師弟関係」を求め続けた。(「第十章 生涯無結社」より)

著者プロフィール
近藤洋太(こんどう ようた)
1949年福岡県久留米市生まれ。中央大学商学部経営学科卒業。詩集に『筑紫恋し』(11年)、『果無』(13年)、『CQICQ』(15年)、『現代詩文庫231近藤洋太詩集』(16年)、『SSS』(17年)など。評論集に『矢山哲治』(89年)、『反近代のトポス』(91年)、『〈戦後〉というアポリア』(00年)、『保田與重郎の時代』(03年)、『人はなぜ過去と対話するのか─戦後思想私記』(14年)、『辻井喬と堤清二』(16年)、『詩の戦後―宗左近/辻井喬/粟津則雄』(16年)、『ペデルペスの足跡―日本近代詩史考』(18年)。

眞鍋呉夫全句集

著者:眞鍋呉夫
定価:2700円+税
判型:A5判・スリーブ函入り
ページ数:248
ISBN:978-4-908568-25-1

眞鍋呉夫生誕100年記念出版。

生涯、師系を持たず、無結社を貫き、自らの生(エロス)と死(タナトス)を極限まで凝視しつづけた俳人・小説家、眞鍋呉夫。
その生誕100年を記念して、第一句集『花火』、第二句集『雪女』(藤村記念歴程賞、読売文学賞受賞)、第三句集『月魄』(蛇笏賞、日本一行詩大賞、鬣 TATEGAMI俳句賞受賞)から句集未収録作品まで、その全句業をここに集成。

跋文=高橋睦郎
栞=那珂太郎/粟津則雄/種村季弘/上久保正敏

眞鍋呉夫(まなべ くれお)
作家・俳人。大正9年(1920年)、福岡県生まれ。
昭和14年(1939年)同人誌「こをろ」を矢山哲治、阿川弘之、島尾敏雄、那珂太郎らと創刊。
昭和16年(1941年)9月、遺書のつもりで第一句集『花火』を刊行。
1948年、小説「二十歳の周囲」などにより新進作家として注目される。
翌49年、「サフォ追慕」により第21回芥川賞候補に推される。
後年は俳句の創作が中心となり、1992年刊行の第二句集『雪女』で藤村記念歴程賞、読売文学賞を、2010年刊行の第三句集『月魄』で蛇笏賞、日本一行詩大賞、鬣TATEGAMI俳句賞受賞を受賞した。
2012年、92歳で没する。