アーカイブ: 刊行物

【近刊】沢田敏子詩集 祝祭の種

著者:沢田敏子
定価:2200円+税
判型:A5変形・上製
ページ数:108
ISBN:978-4-908568-53-4

大道芸人の家族は国境を越えられただろうか
祝祭の種は運ばれただろうか
この時代に、言葉を携えて生き延びるための、祈りにも似た20篇の詩。
沢田敏子、第9詩集。
装幀=清岡秀哉

地軸は もういなくなったひとたちの重さで
ぎ・し・り と いちにちを回転させる

いなくなった ひとよ
だから ずっと いてください
(「火夫と麵麭屋」より)

著者プロフィール
沢田敏子(さわだ・としこ)
愛知県生まれ。日本現代詩人会・日本詩人クラブ会員。
既刊詩集
『女人説話』(1971年)、『市井の包み』(1976年)第十回小熊秀雄賞、『未了』(1980年)第二十一回中日詩賞、『漲る日』(1990年)、『ねいろがひびく』(2009年)、『からだかなしむひと』(2016年)、『サ・ブ・ラ、此の岸で』(2018年)、『一通の配達不能郵便(デッド・レター)がわたしを呼んだ』(2020年)。

【新刊】鈴木正枝詩集 秘かに青く、深く

著者:鈴木正枝
定価:2000円+税
判型:A5判・並製
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-54-1

ひとつのベンチで、部屋で、ひとつの時を、視野を、分かち合う。やがて、それが断たれる日、独りの眼差しに誘われるもの。
前詩集『そこに月があったということに』で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞した鈴木正枝、第三詩集。
装幀=稲川方人。

あなたの大きく見開いた眼が
わたしの視線を切り落とし
何かが壊れてはらはらとこぼれ落ちる
それはふたりの肩に
少しゆるんだ言い訳のように降り積もり
耐えきれない沈黙の端がほころびて
床がゆっくりと濡れていく
(「共有される沈黙」より)

著者プロフィール
鈴木正枝(すずき・まさえ)
茨城県出身。横浜市在住。
『そこに月があったということに』(2016年、書肆 子午線)で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞。
その他の詩集に『キャベツのくに』(2010年 ふらんす堂)。
詩誌「タンブルウィード」「天国飲屋」「るなりあ」同人。

【新刊】坂多瑩子詩集 おはようジャック&ベティ

著者:坂多瑩子
定価:2000円+税
判型:A5変形・並製
ページ数:96
ISBN:978-4-908568-52-7

あなたは/ジャック・ジョーンズですか
わたしはベティ・スミス/革靴をはいてます

ずっと昔の昨日へ弾んでゆけ、詩よ。世界は擦れちがう破片の愛ばかり。
坂多瑩子新詩集。
装幀=稲川方人。

シーちゃんは家船っ子
川に落っこちた話ばかりするので
何してたのどうしたの
わざと聞いて
それでそれでと笑いころげる
ええ者がええ者のまま生きていくのって
息苦しくてしかたがないよ
わるもんいっぱいの映画はなんて痛快なのだろう
なんちゃらかんちゃら風船みたいにかるくて
大きく深呼吸してごめんなんていわなくていい
ズックのかたわれが流れていく
だからなんなの
ハウスボートやねん
影のように座っているシーちゃんがおいでよとあたしを呼んだ
ひまとよ川の祭り
うすく花火があがっている
(「ひまとよ川」より)

著者プロフィール
坂多瑩子(さかた・えいこ)
広島県生まれ。第一詩集『どんなねむりを』(2003年)で第36回横浜詩人会賞受賞。他の詩集に『塩壺とスプーン』(2006年)、『お母さんご飯が』(2009年)、『ミルクパーパの裏庭』(2011年、電子ブック)、『ジャム 煮えよ』(2013年)、『こんなもん』(2016年)、『さんぽさんぽ』(2019年)、『物語はおしゃべりより早く、汽車に乗って』(2023年)。

【新刊】増田秀哉詩集 遺棄されたものたちのドローイング

著者:増田秀哉
定価:2400円+税
判型:A5変形
ページ数:116
ISBN:978-4-908568-50-3

社会によって遺棄された汚点、擦れた絵の具、折れた鉛筆の芯、チャコールの屑。線にもなりきれず、ただ不快として投げられた痕跡。その粗野のなかに潜む慎重な粗暴さ、あるいは、投げやりな囁き声をどうか聴き取ってほしい。
強烈な印象をもたらした第一詩集『零時のラッパをぶっ放せ』から8年、第二詩集ついに刊行!
装幀=清岡秀哉

春はリハーサルで終わった、夏はバーモントが攻めてくるだろう、痣だらけの部屋がソフトフォーカスに燃える、寝癖がますますひどくて、さよなら、時候の挨拶よ、「深夜のカフェインから始まるぼくらの蜂起」のために、茎燃ゆ、茎燃ゆ、ってはしゃぐなよ、隙間という隙間に錯乱を産み付けて、これはチャンスなんだろ、目脂が青く発光するのはチャンスなんだろ(「ビジョンメガネ」より)

著者プロフィール
増田秀哉(ますだ・しゅうや)
1987年大阪府生まれ。
詩集に『零時のラッパをぶっ放せ』(七月堂、2017年)。

【新刊】福島直哉詩集 星の身体

著者:福島直哉
定価:2400円+税
判型:A5変形・上製(コデックス装 ドイツ装)
ページ数:88
ISBN:978-4-908568-51-0

かさなりあうことのないわたしとあなたの瞳に映る記憶の故郷、彼方の岸辺。
涙を失くし、季節を失くし身体を失くしても、生まれくる無名のまたたきが次々にこぼれ落ちる。
待望の福島直哉第二詩集ついに刊行。深き抒情の森へ!
装幀=稲川方人

からだをなくして
それでも生きているさびしさをいのちと呼んで
わたしはもう二度と
誰かに会うことはなくなって
そのことに少しほっとしながら
溜息をこぼすようにそっと空を見上げて
ひかりとかげが一つの音のように
雲の中を流れてゆくあいだ
わたしはこえやことばを使うことに
激しくかなしみながら
そこで流れてゆく多くの景色を
故郷のように眺めている
(「椿の葉は鉛色の光を含み」より)

著者プロフィール
福島直哉(ふくしま・なおや)
1989年、神奈川県横浜市生まれ。
第一詩集『わたしとあなたで世界をやめてしまったこと』(2016年)。

蜆シモーヌ詩集 uta こめでぃあ uta

著者:蜆シモーヌ
定価:2500円+税
判型:小B6判・並製
ページ数:184
ISBN:978-4-908568-49-7

戦争、信仰、たべもの、愛、存在、涙、運命、恍惚… 
オーラルにもテクスチュアルにも伸縮する言葉の群れが世界をユーモラスにうたい照らしだす
コラージュ詩から言語芸術論詩まで
複色に光る詩語たちの行進!蜆シモーヌ第三詩集

じゃ、なにか
人生は
空耳なのか。と、鼻をつまむと
そりゃー
地獄だろ、人生は。と、人生がいう
(「ランチもっと、う。まうまなランチを。地獄で」)

しぼりたて
ハイ
テンションで
LUCKY小籠包。は
大賑わい
Y。Y。よーこさん
ヘンリー
ミラー。に、虹をかける
横で
福。福。ろぶすたー
まっ

ぼいるーされて
あ、
しゅら。に、なるみっどないと
この
すばらしき
世紀末
(「LUCKY小籠包。かみんぐ。うぃーくえんど」)

著者プロフィール
蜆シモーヌ(しじみ・しもーぬ)
1979 年生まれ。第 59 回現代詩手帖賞受賞。
詩集に『なんかでてるとてもでてる』(思潮社、2021 年)、『膜にそっ て膜を』(書肆子午線、2023 年)。

アフター・リアリズム 全体主義・転向・反革命

著者:中島一夫
定価:4300円+税
判型:四六判・上製
ページ数:528
ISBN:978-4-908568-47-3

文学とは、つねに転向者のものである

中村光夫、平野謙、江藤淳、蓮實重彦、三島由紀夫、転向と文学の問題に直面したものたちのリアリズムへの懐疑を通じ、文学にふたたび「転向」という主題を導入する!
転向論のほか、ラーゲリ、保守革命をめぐる諸論考、論争的時評・書評を集成した批評の軌跡。
装幀=稲川方人

私は「私」という言葉に「帰属」しない「残滓」にしかいない。それは「失われた=残滓」としての「ラザロ」だ。「探求としての文学の言語」は、言葉によって死んだ「ラザロ」を蘇らせ再現するのではなく、いかに墓の「ラザロ」、失われた「ラザロ」を求めるか、なのだ。いくら転倒して見えようとも、この逆説にしか文学の真実はない。究極、文学は、ラザロを蘇らせる者と、失われたラザロを求める者とのたたかいである。本当の文学論争はそこにしかない。
(「はじめに アフター・リアリズム、あるいは失われたラザロについて」より)

著者プロフィール
中島一夫(なかじま・かずお)
1968年生まれ。文芸評論家。2000年に「媒介と責任─石原吉郎のコミュニズム」で新潮新人文学賞受賞。2014年の一年間『週刊読書人』にて論壇時評を執筆。著書に『収容所文学論』(論創社)。

藤田文江全集

著者:藤田文江・編者:谷口哲郎
定価:3000円+税
判型:四六判・上製
ページ数:460(口絵8ページ)
ISBN:978-4-908568-48-0

戦前・鹿児島の知られざる詩人・藤田文江。
わずかな生涯の中で、その身の内に躍動する漆黒を見つめた藤田の「聲」を、いま呼び起こす。

左川ちか、永瀬清子と同時代を生き、中野重治に高く評価された詩人の初の全集。
唯一の詩集『夜の聲』全篇と未収録詩篇、散文、書簡、編者による解説、妹・林山鈴子氏へのインタビューを収録。
装幀=稲川方人

夜の聲は何故こゝまでやつて来た。
おまへの咳を聞いてゐると
私はたまらなく寂しくなる。
然し私は私の里おまへに媚びるよ
私はおまへと共にある時
ほんのわづか富んでゐるのだから。
(『夜の聲』より)

著者プロフィール
藤田文江(ふじた・ふみえ)
1908年鹿児島生まれ。短かった人生の約12年間を植民地台湾で送り、本土(鹿児島)に戻って女性だけの詩誌『くれなゐ』に参加。その後『詩神』投稿欄の全国の若き詩人たちが集った詩誌『鬣』の同人に。1933年『万国婦人子供博覧会』の歌詞一等当選。同年、唯一の詩集『夜の聲』を編集したが出版直前に24歳で病死。
編者プロフィール
谷口哲郎(たにぐち・てつろう)
1966年鹿児島生まれ。詩誌『オドラデク』発行。詩誌『野路』『天秤宮』『詩創』同人。
村永美和子の評伝『詩人藤田文江』によりその詩と存在を知り、「戦争の地震計としての詩 藤田文江詩集『夜の聲』(1933)論」、自ら調査した未収録詩篇を中心に「藤田文江異聞」を執筆。

中尾太一詩集『ルート29 、解放 新装版』

著者:中尾太一
定価:2000円+税
判型:四六判・並製
ページ数:136
ISBN:978-4-908568-46-6

中尾太一詩集『ルート29、解放』(2022年)が森井勇佑監督(『こちらあみ子』)により映画化!
映画『ルート29』原作詩集の新装版
装幀=清岡秀哉

国道29号線、きみは
このどうということのないものが接続された
骨と体が
百年後には決して
託せないものをしっているだろうか
わたしはそのころ
きみが素足で土をふみながら歩いていることを
祈っている
約束とはそういうもので
つなぐ手を永遠に借りてもいいという信頼に
わたしは永遠に、救われている
(「ルート29、解放」より)

▪️映画公開情報
『ルート29』
11月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
出演:綾瀬はるか、大沢一菜、市川実日子、高良健吾、河井青葉
監督・脚本:森井勇佑
配給:東京テアトル、リトルモア
©2024「ルート29」製作委員会
公式サイト:route29-movie.com/