
『海辺の翼』
四六判・並製/84頁/2000円+税
柔らかな理性に抱かれるまなざし
さまようこころにも言葉は寄り添い
喧噪なき道行きを慈しむ
前詩集『斐伊川相聞』で第58回日本詩人クラブ賞を受賞した冨岡悦子、新詩集。
秋の夜、わたしのフネに人を招いた。
黒葡萄と手書きの海図をたずさえて、
あなたはそっと足を踏み入れた。
ちいさなフネに、ようこそ、狭いけれど、ようこそ。
これから陸地を離れてふたり、夜をわたるのね。
今夜はいざよいの月。
東から浮かんで、しずしずのぼってゆく。
月はこうこうとあなたの海図を照らし、
ここがどこなのか人差し指を重ね、
アクロス・ザ・ユニバースをふたりで口ずさんで。
わたしたちの夜が
こわれないように
額の奥で
祈りながら。
(「いざようよ」より)