カテゴリー: shinkan

【新刊】『藤田文江全集』を刊行しました。

『藤田文江全集』
戦前・鹿児島の知られざる詩人・藤田文江。
わずかな生涯の中で、その身の内に躍動する漆黒を見つめた藤田の「聲」を、いま呼び起こす。

左川ちか、永瀬清子と同時代を生き、中野重治に高く評価された詩人の初の全集。
唯一の詩集『夜の聲』全篇と未収録詩篇、散文、書簡、編者による解説、妹・林山鈴子氏へのインタビューを収録。
編者=谷口哲郎/装幀=稲川方人

夜の聲は何故こゝまでやつて来た。
おまへの咳を聞いてゐると
私はたまらなく寂しくなる。
然し私は私の里おまへに媚びるよ
私はおまへと共にある時
ほんのわづか富んでゐるのだから。
(『夜の聲』より)

四六判・上製/460頁/3000円+税

【新刊】冨岡悦子詩集『斐伊川相聞』を刊行しました。

『斐伊川相聞』
八雲たつ地は きょうは雨降り。出雲空港に降り立ったひとつの意志が時を重ねたみずからの生の消息を川の蛇行に沿ってさまよう父に告げる。
小熊秀雄賞・小野十三郎賞受賞の『反暴力考』から4年、冨岡悦子新詩集。
装幀=稲川方人
父とふたり 川を見つめていた
水は滔々と流れ 岸をあらった
川を渡る判断は 父の右手にあり
左手は 私の手を握っていた
はねあがる 褐色の冬の鹿が
脳裏で ひときわ高く跳んだ
後裔を絶った人の 声がよみがえってくる
さざれ石を 荘厳な声で うたうな
(「父の右の手」より)

四六判・上製(コデックス装 ドイツ装)/80頁/2400円+税

【新刊】林美脉子『悠久の古代紀行 砂に呼ばれて』を刊行しました。

『悠久の古代紀行 砂に呼ばれて』
詩が言葉を受肉する彼方へ 言葉になるまえの遥かな声に呼ばれ、古代がいまだ息づいていたインド、エジプト、中国を巡る詩人のひとり旅
自分はどこからきたのか――。その問いに導かれ、ひとり飛び込んだインドへの旅路にはじまり、エジプト、中国を巡った詩人・林美脉子による約35年前の旅の記録。 抗えない思いに突き動かされて世界4大文明の地を彷徨った著者の言葉によって、いまや感じることのできない、もはや消え去ってしまった古代の混沌とした息吹が感じられる紀行文。 装幀=菊井崇史
四六判・並製/312頁/2500円+税

【新刊】宮田直哉詩集『ある風景』を刊行しました。

『ある風景』
けれども私は待ち望んでいるのかもしれなかった。 目の前の風景が白く永遠と広がってゆく中で、 かつて互いのまぶたの上をかすめていたほのかな明かりと、 互いに感じあっていた微かな体温とが、 忘れ去られ、忘れ果てることを。 (「ある愛の風景」より)
なんでもないような風景に目をやれば、そこには記憶や過去の人々が、ふいに映し出されてしまう。おぼろげに揺らぐ、ともすればつかみそこない、のがしてしまうものを、二人称の呼びかけによってたしかめていくように綴られた41篇の詩。
抒情詩の精髄を引き継ぐ詩人の第2詩集。
装幀=清岡秀哉

A5変形・上製/96頁/2400円+税

【新刊】坂多瑩子詩集『物語はおしゃべりより早く、汽車に乗って』を刊行しました。


『物語はおしゃべりより早く、汽車に乗って』

抒情からも、抒事からも自由に言葉がはばたいていくとき、詩は、遥かに再来する物語のひとつひとつを、ふかく抱きしめている。
詩人の新たな出発を示す42篇を収めた第七詩集。
栞=杉本 徹/柴田千晶
造本・装幀=稲川方人/装画=高橋千尋
A5変形・並製筒函/132頁/定価:2200円+税

ちっちゃな青空
という言葉がやけに好きだった 松尾和子の歌う「再会」
あたしの見ていた空はいつだって大きかった
よそよそしくていじわるで きどりや
だから あっかんべ
ちっちゃな青空って
かわいい かわいいかわいいといっていると
ひとりにしないでとちっちゃな青空がいうので
抱きかかえてあたしだけのおうちに帰った
(「夏のおわりに父」より)

自分にとって原型となり得る詩、という言葉が常に頭の隅にあった。今ようやく自分の書いてきたおぼつかない詩がジグソーパズルのように一つの風景を見せ始めてくれている。(「あとがき」より)

【新刊】中尾太一 詩集『ルート29、解放』を刊行しました。

『ルート29、解放』
薄く、張り裂けそうな詩の皮膚に精いっぱいの光を浴びて予感する明日のポエトリー
中尾太一新詩集!
A5判変形/144頁/定価:2800円+税
装幀=稲川方人/カバー写真撮影=菊井崇史

声を押し殺し
こころを固く閉ざし
わたしも、あなたも
生まれたというたったひとつの史実に現れようと
中指を突き立てる
(「飛行機雲」より)

【新刊】岸田将幸 詩集『風の領分』を刊行しました。

ごらん、これがほんとうの正午の火照り。きみに影をつくる、生きて在ることの静かな明るさ

『風の領分』 A5判変形/112頁/定価:2800円+税

現代詩の主体と詩語のありかを問い続けてきた詩人・岸田将幸。
前詩集『亀裂のオントロギー』から7年、静かなる耐久の時間を経て、限りある存在の地平から詩にゆるやかな解放をもたらす待望の第六詩集。
装幀=著者自装

本書は単純な章立てで構成した。この四つの場所を行ったり来たりしているのが近年の詩の正直な姿で、それ以上ではない。あとは、おぼつかない生活があるだけである。
それでも、僕は依然として誰かを、何かを説得しようとしている。
(「後書」)

【新刊】古屋 朋詩集『ひとつゆび』を刊行しました。

見開かれた瞳に映じる世界の明滅。
新鋭による第一詩集。
装幀=鈴木規子/カバー・口絵写真=manimanium


『ひとつゆび』
A5判・仮フランス装/84頁/定価:2200円+税

このとまらないゆれは
うまれるずっとまえからはじまっていると
どこかに書いてあったようにおもう
大きなゆれにたおれないよう
われないよう
あんしんかんを やすらぎを
かろうじて
ひとつのゆびで
おさえてゆくのだろう
(「ひとつゆび」より)

ぜひお近くの書店にてお手にとってみてください。
小社ホームページからもご購入いただけます。