カテゴリー: shinkan

【新刊】鈴木正枝詩集『秘かに青く、深く』を刊行しました。

『秘かに青く、深く』 A5判・並製/88頁/2000円+税
ひとつのベンチで、部屋で、ひとつの時を、視野を、分かち合う。やがて、それが断たれる日、独りの眼差しに誘われるもの。
前詩集『そこに月があったということに』で第13回日本詩歌句随筆評論大賞詩部門大賞受賞した鈴木正枝、第三詩集。
装幀=稲川方人。

あなたの大きく見開いた眼が
わたしの視線を切り落とし
何かが壊れてはらはらとこぼれ落ちる
それはふたりの肩に
少しゆるんだ言い訳のように降り積もり
耐えきれない沈黙の端がほころびて
床がゆっくりと濡れていく
(「共有される沈黙」より)

【新刊】坂多瑩子詩集『おはようジャック&ベティ』を刊行しました。

『おはようジャック&ベティ』 A5変形・並製/96頁/2000円+税
あなたは/ジャック・ジョーンズですか
わたしはベティ・スミス/革靴をはいてます

ずっと昔の昨日へ弾んでゆけ、詩よ。世界は擦れちがう破片の愛ばかり。
坂多瑩子新詩集。
装幀=稲川方人。

シーちゃんは家船っ子
川に落っこちた話ばかりするので
何してたのどうしたの
わざと聞いて
それでそれでと笑いころげる
ええ者がええ者のまま生きていくのって
息苦しくてしかたがないよ
わるもんいっぱいの映画はなんて痛快なのだろう
なんちゃらかんちゃら風船みたいにかるくて
大きく深呼吸してごめんなんていわなくていい
ズックのかたわれが流れていく
だからなんなの
ハウスボートやねん
影のように座っているシーちゃんがおいでよとあたしを呼んだ
ひまとよ川の祭り
うすく花火があがっている
(「ひまとよ川」より)

【新刊】福島直哉詩集『星の身体』を刊行しました。

『星の身体』 A5変形・上製(コデックス装 ドイツ装)/88頁/2400円+税
かさなりあうことのないわたしとあなたの瞳に映る記憶の故郷、彼方の岸辺。
涙を失くし、季節を失くし身体を失くしても、生まれくる無名のまたたきが次々にこぼれ落ちる。
待望の福島直哉第二詩集ついに刊行。深き抒情の森へ!
装幀=稲川方人

からだをなくして
それでも生きているさびしさをいのちと呼んで
わたしはもう二度と
誰かに会うことはなくなって
そのことに少しほっとしながら
溜息をこぼすようにそっと空を見上げて
ひかりとかげが一つの音のように
雲の中を流れてゆくあいだ
わたしはこえやことばを使うことに
激しくかなしみながら
そこで流れてゆく多くの景色を
故郷のように眺めている
(「椿の葉は鉛色の光を含み」より)

【新刊】蜆シモーヌ詩集『uta こめでぃあ uta』を刊行しました。

『uta こめでぃあ uta』
戦争、信仰、たべもの、愛、存在、涙、運命、恍惚… 
オーラルにもテクスチュアルにも伸縮する言葉の群れが世界をユーモラスにうたい照らしだす
コラージュ詩から言語芸術論詩まで
複色に光る詩語たちの行進!蜆シモーヌ第三詩集

じゃ、なにか
人生は
空耳なのか。と、鼻をつまむと
そりゃー
地獄だろ、人生は。と、人生がいう
(「ランチもっと、う。まうまなランチを。地獄で」)

【新刊】中島一夫『アフター・リアリズム 全体主義・転向・反革命』を刊行しました。

『アフター・リアリズム 全体主義・転向・反革命』
文学とは、つねに転向者のものである

中村光夫、平野謙、江藤淳、蓮實重彦、三島由紀夫、転向と文学の問題に直面したものたちのリアリズムへの懐疑を通じ、文学にふたたび「転向」という主題を導入する!
転向論のほか、ラーゲリ、保守革命をめぐる諸論考、論争的時評・書評を集成した批評の軌跡。
装幀=稲川方人

私は「私」という言葉に「帰属」しない「残滓」にしかいない。それは「失われた=残滓」としての「ラザロ」だ。「探求としての文学の言語」は、言葉によって死んだ「ラザロ」を蘇らせ再現するのではなく、いかに墓の「ラザロ」、失われた「ラザロ」を求めるか、なのだ。いくら転倒して見えようとも、この逆説にしか文学の真実はない。究極、文学は、ラザロを蘇らせる者と、失われたラザロを求める者とのたたかいである。本当の文学論争はそこにしかない。
(「はじめに アフター・リアリズム、あるいは失われたラザロについて」より)

【新刊】『藤田文江全集』を刊行しました。

『藤田文江全集』
戦前・鹿児島の知られざる詩人・藤田文江。
わずかな生涯の中で、その身の内に躍動する漆黒を見つめた藤田の「聲」を、いま呼び起こす。

左川ちか、永瀬清子と同時代を生き、中野重治に高く評価された詩人の初の全集。
唯一の詩集『夜の聲』全篇と未収録詩篇、散文、書簡、編者による解説、妹・林山鈴子氏へのインタビューを収録。
編者=谷口哲郎/装幀=稲川方人

夜の聲は何故こゝまでやつて来た。
おまへの咳を聞いてゐると
私はたまらなく寂しくなる。
然し私は私の里おまへに媚びるよ
私はおまへと共にある時
ほんのわづか富んでゐるのだから。
(『夜の聲』より)

四六判・上製/460頁/3000円+税

【新刊】冨岡悦子詩集『斐伊川相聞』を刊行しました。

『斐伊川相聞』
八雲たつ地は きょうは雨降り。出雲空港に降り立ったひとつの意志が時を重ねたみずからの生の消息を川の蛇行に沿ってさまよう父に告げる。
小熊秀雄賞・小野十三郎賞受賞の『反暴力考』から4年、冨岡悦子新詩集。
装幀=稲川方人
父とふたり 川を見つめていた
水は滔々と流れ 岸をあらった
川を渡る判断は 父の右手にあり
左手は 私の手を握っていた
はねあがる 褐色の冬の鹿が
脳裏で ひときわ高く跳んだ
後裔を絶った人の 声がよみがえってくる
さざれ石を 荘厳な声で うたうな
(「父の右の手」より)

四六判・上製(コデックス装 ドイツ装)/80頁/2400円+税

【新刊】林美脉子『悠久の古代紀行 砂に呼ばれて』を刊行しました。

『悠久の古代紀行 砂に呼ばれて』
詩が言葉を受肉する彼方へ 言葉になるまえの遥かな声に呼ばれ、古代がいまだ息づいていたインド、エジプト、中国を巡る詩人のひとり旅
自分はどこからきたのか――。その問いに導かれ、ひとり飛び込んだインドへの旅路にはじまり、エジプト、中国を巡った詩人・林美脉子による約35年前の旅の記録。 抗えない思いに突き動かされて世界4大文明の地を彷徨った著者の言葉によって、いまや感じることのできない、もはや消え去ってしまった古代の混沌とした息吹が感じられる紀行文。 装幀=菊井崇史
四六判・並製/312頁/2500円+税

【新刊】宮田直哉詩集『ある風景』を刊行しました。

『ある風景』
けれども私は待ち望んでいるのかもしれなかった。 目の前の風景が白く永遠と広がってゆく中で、 かつて互いのまぶたの上をかすめていたほのかな明かりと、 互いに感じあっていた微かな体温とが、 忘れ去られ、忘れ果てることを。 (「ある愛の風景」より)
なんでもないような風景に目をやれば、そこには記憶や過去の人々が、ふいに映し出されてしまう。おぼろげに揺らぐ、ともすればつかみそこない、のがしてしまうものを、二人称の呼びかけによってたしかめていくように綴られた41篇の詩。
抒情詩の精髄を引き継ぐ詩人の第2詩集。
装幀=清岡秀哉

A5変形・上製/96頁/2400円+税