【新刊】廃屋の月

著者:野木京子
定価:2200円+税
判型:四六判・並製
ページ数:120
ISBN:978-4-908568-41-1

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書籍の説明

第35回富田砕花賞受賞

最後に満月を見た日のことは覚えていないけれど
夜になると見るだろう月の姿を昼のうちに思い描くことはできる
わたしにも透き通る触手があればいいのに
そうしたら進む道などは光の方向でしかなくなるから

水面に落ち込んだかつての月明かり、今は亡き人が昔飼っていた犬の鳴き声、夢うつつの気水域に立ち現れるさざなみのような声や断片を拾い集めるように書き継がれた32篇。詩人・野木京子、第6詩集。
装幀=稲川方人

空の河原かどこかで逢ったことのある/小さな子が部屋の隅から出てきて言った/ゆっくりと回転しながら/この世に現れ出たのだから/立ち去るときもきっと/見えない姿のまま/ゆるやかに回転して/戻っていくはず/そのとき真新しい風を頰に浴び/初めての色彩の景色を見るから/楽しみにしているとよいよ/と(「空の河原」より)

著者プロフィール
野木京子(のぎ・きょうこ)
詩人。熊本県八代市生まれ。2007年に『ヒムル、割れた野原』(思潮社、2006年)で第57回H氏賞を受賞。
その他の詩集に『明るい日』(思潮社、2013年)、『クワカ ケルル』(思潮社、2018年)などがある。

目次

汽水域
西日の神様
秋の庭
空の河原
棄てられた声 裏山を越えたところ
心の奥であるような気もする
声が聞こえるほうへ
球根
庭の片隅で
常世の実
十四日月と海
犬も鳥も
翳りの息
花崗岩ステーション
空中映画館
ときには透明のようにも見え ひとの面影がうごめいている
どこにもいなくなったときには光のなかにいる
きゅい ぎゅい
ピシャッ
家を訪ねる
クル ミの実のなかに橋が
小舟と声
窓辺
樹木も叫びの粒を空へあげる
音無し
廃屋の月
つぶつぶ
世界は薄い氷の上に乗っているのに
水母の日記帳
どこにもない植物園
お山へ行くまでに
じぐざぐ